
はじめに
第1回は、作る前に押さえておきたいことを扱う回でした。最後の個別ワークで、参加者の皆さまにご自身の担当業務からひとつを選んでいただいています。
第2回は、そこで選ばれた業務をそのままお題にして、実際に作っていただく回です。最終ゴールは参加者のスマートフォンから開けるURLでツールが動いている状態で、そこまでを一日で通しました。

前回の要点を、短く戻す
冒頭は振り返りに充てました。三層分離は経路と置き場所の設計であること、料金も一度に扱える量もトークンで決まること、大事な前提は文書にして毎回渡すこと。国の動向と、求められる人材像がDX人材からAI・AX人材へ移りつつあることも、あわせて確認しています。

今日渡っていただく、3つの体験
この日の設計は3段です。まず業務と無関係な題材で1本作る。次に持ち込み題材をPlan→実装→改善で仕上げる。最後にAWSで動かして公開し、スマートフォンから開く。
最初の1本をあえて業務から離すのは、様式や関係者との調整が頭に浮かぶと手が止まりやすいためです。先に「思ったものが出てきた」という感覚を持っていただいてから、業務のほうへ移ります。

Part 1|つくる道具に慣れる
まずはClaude Codeを入れて、全員が起動できるところまで揃えます。ここで止まると先へ進めないので、つまずきやすい2箇所は参考ページとして資料に入れておきました。
起動できたら、いきなり作らせずにPlan Modeを使っていただきます。Shift+Tabで切り替えると、実装せずに計画だけが返ってくる形です。指示があいまいだとAIのほうから質問が返ってくるので、その往復自体が要件を固める作業になります。

ハンズオン①では、お題を自由にして、HTMLファイル1枚で完結する形だけを条件にしました。計画を立てさせ、ブラウザで開いて動かし、直したい点をひとつ伝えて直す。この3手を回していただくところが到達点になります。

指示は、場所・不満・合格条件で組み立てる
「いい感じに見やすくして」ではAIも迷います。かわりに、①どこの話か ②何が困るか ③どうなれば合格か、の3点を組み合わせていただきます。場所の指し方は技術用語でなくて構いません。「見出しのすぐ下の青いボタン」で十分伝わりますし、画面を撮って会話にドラッグする方法もあります。

口頭ではなく、ファイルで約束する
毎回同じことを言い直さずに済ませる仕組みとして、CLAUDE.mdを扱いました。作業フォルダに置いたこのファイルを、Claude Codeは起動のたびに読みます。日本語で説明すること、実データを使わずダミーデータで作ること、作る前に必ず計画を示すこと。部署の命名規約もここに足していけます。

モデルの違いと、対話の資産化
モデルの違いも説明しました。計画と設計は思考力の高いOpus、手を動かす実装は高速なSonnet。この日は設定を変えていただくところまでは求めず、仕組みの紹介にとどめています。生成AIは入力と出力の量で課金されるので、この使い分けはそのまま費用の話になります。今回は設計フェーズでOpusを回した時間が長く、想定していた水準を上回りました。

もう一段が、SkillとAgentです。うまくいった対話をその場限りで終わらせず、手順書(Skill)と専門係(Agent)としてファイルに残します。「いま行った手順を、次回から呼び出せるスキルにして」と頼めば、AIが書きます。人の仕事はレビューと承認だけです。

Part 2|業務のツールをつくる
ハンズオン②では、前回のワークで挙げていただいた業務に入ります。向く題材は、入力と出力がはっきりしているもの。この日避けていただいたのは、実データや個人情報がないと試せないもの、基幹系やLGWAN側との連携が前提のもの、様式変更のように関係者との合意が要るもの、そして全部入りの構想でした。
個人情報と機密情報は入れずに、ダミーデータで見栄えを確かめる形で進めます。既存システムとの連携についてもご質問をいただきました。APIやデータの書き出しの仕組みがあれば道はありますが、画面表示しか持たないシステムはつなぎにくいところです。

この時間の途中で、私が作っているがっこどっこもお見せしました。学校からのお便りを撮影すると、日付・持ち物・提出物が抜き出されてカレンダーに入るアプリです。参加者の方からは、監査で見ている請求書の支払い遅延を防ぐ用途に使えないかというご相談をいただきました。撮って読み取り、人が確認してから登録する、という流れであれば同じ作りでいけます。
Part 3|クラウドで動かす
昨年度の演習では、AWS上にサーバーを1台立て、Webサーバーの機能を入れ、公開用の設定を人が手で行っていました。開発はAI、クラウドは人力という時代の型です。

今回は、その部分をAIに渡します。AWSを文字で操作する道具(AWS CLI)を入れておけば、画面のクリックではなくコマンドで操作できる状態になり、Claude Codeに代行させられるようになりました。

最初に扱うのはS3です。ファイル置き場にHTMLを置いて公開設定を入れると、それだけでWebサイトになります。置いたファイルをそのまま返す静的な形なので、サーバーの保守が要らず、落ちにくく、費用も月に数円の桁で収まります。

費用の考え方もここで扱いました。サーバーを1台持つ構成は、誰にも使われない月でも同じ額がかかります。使った分だけ払う構成なら、アクセスがゼロの月はほぼ0円です。どれだけ使われるか読めない試作や共有には、後者のほうが向いています。

データを保管させるところまで
公開できたら、次はデータの保存です。受け付ける係、処理する係、覚える係を足すと、住民が入力した内容を保存して一覧で確認できる形になります。資料では「公園の遊具が壊れている」という通報が保存されるまでを、4つの箱の間の往復として描きました。

データベースの選び方も、たとえで整理しました。きっちり管理簿(RDBMS)と、受付票の束(DynamoDB)。集計や突き合わせが主役なら前者、1件ずつの記録と参照が主役なら後者です。実際の指示は「データを保存するようにして」の一言で通ります。

作ったものを、見てもらう形にする
動くものができても、係会議で口頭では伝わりません。手順書を書く時間もなく、結局は作った本人だけが使っている。よくある行き止まりです。
そこで紹介動画の作り方も扱いました。画面録画ではなく、文章と画面イメージから短い動画をコードで組み立てる方法で、作ったサービスと同じやり方のまま動画まで進めます。公開できたツールは、こちらで用意したショーケースに名前とURLを登録していただき、参加者全員で見られるようにしました。

発表 ― この日生まれたもの
最後は成果発表です。何を、なぜ、どう作ったかを一人ずつ共有していただきました。8点が形になっています。
- 水道料金の支払いスケジュール管理
支払い状況・銀行振込日・支払い方法を職員側で確認するツール
- 駐車場管理システム(改良版)
前回作ったものを作り直し、状態を「空き/使用中/混雑」の3つに整理してデータの書き出しも追加
- 業務管理ダッシュボード
Excelの業務記録を読み込ませると、年間の業務量・繁閑・期限超過がグラフになる。去年の今頃に何をしていたかが分かる
- 税申告書の処理記録
受付内容を入力して貯め、CSVで書き出す。入力漏れの確認に使う個人用
- 福祉バスの予約状況確認と申請フォーム
利用者名を伏せた予約状況を外部団体向けに公開し、その場で申請まで完結させる
- 支払い遅延の防止ツール
監査業務からの持ち込み。今回はスクリプト形式で、ブラウザで開く形への作り直しが次の課題
- お役立ちアプリボックス
すでに庁内にあったツール群を、デザインを揃えて検索機能を足す形でまとめ直したもの
- 旅費計算システム
出発地と到着地を入れると旅費が自動で出る。手元のExcelの仕組みに載せる形
台帳・予約・集計の可視化に集まったのは、偶然ではありません。もう手元にある情報を、使いやすい形に並べ替える。手が届く範囲は、そのあたりからいちばん広がります。
作れた、その先
締めくくりでは、この日の到達点がどこまでかを確認しました。自分のパソコンの上で動く効率化ツールであれば、今日の技術でそのまま作れます。庁内に配る、住民に公開する、となると、セキュリティと運用保守の検討が別に必要になります。
ここで、第1回でお見せした北海道芽室町の話に戻りました。コードを点検できる人、設計の耐久性、保守し続ける人とお金。作った職員が異動したらこの仕組みはどうなるのか、という一本の軸でつながっています。

おわりに
2回を通して、参加者の皆さまは「作れるかどうか」の段を越えられました。次に来るのは、どこまでを自分たちでやり、どこから先を情報部門や事業者にお願いするのかという線引きです。この判断は、稼働環境やセキュリティ、費用の桁を一度自分の手で触っていないと下せません。
研修のあとを続けるための形として、年間支援のAI FDEもご紹介しました。扱う情報の区分やルールを整え、業務アプリを作り、公開して使われるところまでを1年で見る枠組みです。作ったものを一人に抱えさせないための、もう一つの選択肢です。

お手伝いできること
この研修は、扱う範囲を貴団体の状況に合わせて組み替えられる形にしています。今回のようにクラウド公開まで通すこともできますし、手元で動くツールまでに絞って、対象業務を決めるワークショップに時間を厚く割くこともできます。演習用のAWS環境(権限設計、テンプレート、ショーケース)はこちらで用意しますので、団体側でのご準備は最小限で構いません。
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