nice2have コラム ・ OptSight AWSコストを「可視化」から「最適化」へ ― OptSightを作った理由

nice2have合同会社 中島淳之介 2026年7月 #ガバメントクラウド #FinOps #運用経費

移行後に高騰した運用経費は、道路などの社会インフラ整備にまで間接的な影響を及ぼし始めています。可視化ができていなければ、取り組むべきことすら明確にならない——実際の自治体からの依頼を受けて開発した、自治体目線のFinOps SaaSの話。

はじめに

標準化・ガバメントクラウド移行という大きな山を経て、多くの自治体が安定稼働・運用のフェーズに入りつつあります。私は日々、自治体の情報政策や財政の現場の方々とやり取りをしていますが、この移行の過程で自治体側に起きた変化は小さくないと感じています。デジタルに真剣に取り組んだからこそ得られた経験によって、「次に何をすべきか」が現場のなかで明確になってきた、ということです。

そして、その「すべきこと」の筆頭に挙がるのが、移行後に高騰した運用経費への向き合い方です。移行後の運用経費が従来比で2〜3倍になったというケースは珍しくなく、「デジタル破産」という言葉が生まれるほど、経常経費としての捻出が難しくなっている自治体が各地にあります。

ガバクラ移行の"その後"に、いま現場が立っている
PHASE 1移行を経て
安定稼働へ
PHASE 2運用経費の
高騰が顕在化
PHASE 3継続的な最適化
(FinOps)へ
▲ 移行後の運用経費は従来比2〜3倍のケースも。「デジタル破産」という言葉が生まれている

しかもこの影響は情報部門の中だけにとどまりません。膨らんだ運用経費の捻出は、結果的に道路などの社会インフラを改修する時期を遅らせるなど、他の事業にも間接的に影響を及ぼし始めています。情報システムの経費が、行政経営そのものの問題になってきているわけです。

この状況に対する私なりの答えとして作ったのが、自治体向けAWSコスト最適化(FinOps)SaaS「OptSight」です。今回はその背景と考え方を書いておきます。

OptSight ― 自治体向け AWS コスト最適化(FinOps)SaaS
OptSight ― 自治体向け AWS コスト最適化(FinOps)SaaS
AWS管理コンソールを開かずに、自治体のAWS運用経費を継続的に最適化するダッシュボード。

クラウドの経費は「調達して終わり」ではない

オンプレミスの時代は、調達時に5年分のコストがほぼ確定していました。毎年ほぼ一定で、途中で増えも減りもしない。予算要求の観点では、ある意味で楽な構造だったと思います。

クラウドは違います。使った分だけの従量課金なので、放置すればムダが積み上がって高騰が続く。しかし裏を返せば、毎月見直せば、毎月下げられる構造でもあります。

「調達して終わり」から「毎月変動する経費」へ
「調達して終わり」から「毎月変動する経費」へ
オンプレミスは調達時に5年分がほぼ確定。クラウドは使った分だけ毎月変動し、放置すればムダが積み上がる。

クラウドは、毎月見直せば、毎月下げられる。
高騰した経費にこそ、FinOpsが効きます。

つまり、高騰した経費にこそ、FinOps——毎月回り続けるコスト最適化の実践——が効きます。単発の見直しでは追いつきません。ここが、これまでの情報システム経費とのいちばん大きな違いです。

理想が叶わないのには、理由がある

とはいえ現場では、そもそも見直しの入口に立つことすら簡単ではありません。ASPごとに請求書や報告書の形式はバラバラで、届くのは早くても翌月・月1回。情報政策課の手元に、リアルタイムの全体像がないのです。

内訳は見えても、どこをどう削ればよいかの打ち手が見えない

使っていない時間帯もEC2が起動したまま、気づくのは翌月の請求書

状況を確認するたびに、AWS管理コンソールへログインしている

サーバーの実態も同じです。これまでの共同利用方式では、どんなサーバーが動いているのか・起動しているのか・性能は足りているのかすら、自治体側からは見えませんでした。

分断されていた情報を、OptSightが1つに束ねる
分断されていた情報を、OptSightが1つに束ねる
月次の請求書でしかつながっていなかった情報の流れが、読み取り専用の日次自動収集に変わり、職員・ASP・議会それぞれに必要な形で届く。

理想どおりにいかないのには、こうした構造的な理由があります。ただ、理由があるからといって放置してよいわけではなく、それでも取り組んでいかなければならない。そしてそのときに可視化ができていなければ、取り組むべきことすら明確にならないのです。削減の機会が放置されたままになっている現状は、職員の方々の意欲の問題ではなく、仕組みの問題だと私は考えています。

実際の自治体からの依頼が出発点

OptSightは、机上の企画から生まれたサービスではありません。限定的な可視化では最適化に取り組むことができない、ではどうしたらいいのか——という実際の自治体の方からの依頼を受けて開発したサービスです。だからこそ、徹底的に自治体目線で作っています。

具体的には、可視化・分析・検知・運用の4つをひとつのダッシュボードでつなぎ、最適化を「見える化」で終わらせず、毎月回り続ける状態にすることを目指しました。

FinOpsを回すための、4つの能力
① 横断的な可視化コストだけでなくEC2の稼働状況・性能まで。自治体本体とASPのアカウントを、切り替えなしで横断把握
② AIによる最適化分析「次の打ち手」を根拠と削減見込み額つきで提示。専門知見の不足を補う
③ お金の動きの自動検知落とし忘れ・予算超過・コスト異常など7種のアラートで先回り検知。AWS側の設定は不要
④ 継続できる仕組み月次の分析レポート(PPTX)を自動生成。立てたら終わりではなく、毎月回るサイクルに

まず可視化です。サービス別・アカウント別のコスト内訳と日次推移を一画面に集約し、自治体本体とASPのアカウントを同じビューで横断して確認できます。長期割引や為替を加味した「実際に支払う額」に近い実コストへの切り替え、年度累積コストと年度予算の突き合わせも画面上で完結します。EC2についても、全アカウント横断の一覧で稼働状態やCPU・メモリ・ディスクの使用率まで見えるので、台帳いらずで全体像を把握でき、スペック見直しの材料になります。追加・削除・スペック変更といった構成変更も毎時収集して差分つきで時系列に記録するため、ASPからの報告との突き合わせにも使えます。

コストの内訳が、コンソールなしで分かる
コストの内訳が、コンソールなしで分かる
サービス別・アカウント別のコスト内訳と日次推移を一画面に集約(日次自動更新)。

次に打ち手です。蓄積されたコスト・インスタンス・予算のデータをもとに、コスト最適化の専門家が普段アドバイスするような内容をAIが提案します。「なぜそうするか」という根拠と「いくら下がる見込みか」という削減見込み額がセットで提示されるので、上席への説明にそのまま使えます。

AIが、削減の打ち手を提案する
AIが、削減の打ち手を提案する
優先度つきの改善提案が、根拠と削減見込み額つきで提示される。AI提案に使うデータが学習に利用されることはない。

検知の面では、7種のアラートを1つの受信箱に集約し、メールでも通知します。インスタンスごとに「動いていてよい時間帯」を登録しておくだけで、スケジュール外の稼働を検知した時点でアラートが届く。翌月の請求書ではなく、当日に気づける、ということです。しかもコスト急増検知や円建て予算の設定はOptSightだけで完結し、AWS側の設定変更は一切不要なので、ASPに作業を依頼する必要がありません。

これから本格化する、長期割引という論点

もうひとつ、これから本格的に求められるようになると考えているのが、Savings PlansやReserved Instancesといった長期割引の活用です。「いくら買うか」の判断を誤ると、多すぎれば未使用分の支払い、少なすぎれば割引の逃しになる。かといって適正額を机上で見積もるのは、相当な手間と知見が要る作業でした。

長期割引、「いくら買うか」も「適正だったか」も
長期割引、「いくら買うか」も「適正だったか」も
実構成(EC2・RDSインベントリ)から適正コミット額を1円単位で試算し、購入後は実削減額・利用率・カバー率を月次で自動検証。

OptSightは、連携アカウントの実際のEC2・RDS構成を読み込んで、適正なコミット額を1円単位でシミュレーションします。そして購入後は、コミット額が適正だったのかを実削減額・利用率・カバー率で毎月自動レポーティングします。「いくら買うか」も「適正だったか」も、実構成から算出することで手間を大幅に削減する。机上の想定ではなく、数字で次の判断ができるようになります。

「読み取り専用」だから、入れても怖くない

セキュリティ面の設計は、最初から「読み取り専用」に絞りました。OptSightがAWSに対して持つのは「見る」権限だけで、設定やサーバーを変更することは仕組み上できません。長期キーは預からず、短時間有効の認証で接続します。取得するのはインフラ運用のメタデータのみで、個人情報や業務システムの中身には一切アクセスせず、データは東京リージョンで国内保管します。AI提案に使うデータが学習に利用されることもありません。機能の充実より先に、「入れても怖くない」ことを担保したかったからです。

読み取り専用だから、入れても怖くない
読み取り専用だから、入れても怖くない
「見る」ためのAPIだけを許可し、変更は仕組み上できない。取得するのはインフラ運用のメタデータのみ・東京リージョンで国内保管。

おわりに ― まずはデモから。そして、今から準備を

まずは公開デモを触ってみてください。会員登録不要・ブラウザですぐに、サンプルデータでコスト内訳からAI提案・月次レポートまで一通り体験できます。その先には、実際のAWS環境での無償トライアルも用意しており、自治体・ASPのどちらからでも参加いただけます。

そして自治体の方々にお伝えしたいのは、可視化・最適化の取り組みは、補助金の活用先として計画に載せられるテーマだということです。予算要求や補助金活用の検討には準備期間が要ります。実際に動き出してから慌てるのではなく、いまのうちにデモやトライアルで手応えを確かめ、来年度に向けた計画づくりを始めていただきたい——これが、移行の山を越えてきた自治体の方々への、私からのお願いです。

高騰した運用経費、「可視化」から始めませんか

公開デモは会員登録不要・ブラウザですぐ。コスト内訳からAI提案・月次レポートまで、実物のUIで体験できます。
実環境での無償トライアルは、自治体・ASPどちらからでもご参加いただけます。

補助金・予算要求に向けた計画づくりのご相談もお受けしています。お気軽にお声がけください。

他のコラム・ブログ記事

情報資産台帳を「作って終わり」にしないために ― GovLensという答え
GovLens

情報資産台帳を「作って終わり」にしないために ― GovLensという答え

台帳化・可視化・妥当性判断・最適化のサイクルを、AIで「続く仕組み」に変える。情報資産台帳がなぜ形骸化するのか、その答えとして作ったGovLensの話。

読む →
自治体職員向けAI駆動開発研修(第1回)を実施しました
活動レポート

自治体職員向けAI駆動開発研修(第1回)を実施しました

「委託に出すほどではない困りごと」を、我慢する対象から解決できる対象へ。ある自治体で実施した全2回ハンズオン研修・第1回の記録です。

読む →
自治体のAIアプリづくりに、共通の土台を。AI開発・運用基盤〈源内〉を、誰でも触れる実験場〈ひふみAI〉として公開します
サービス紹介

自治体のAIアプリづくりに、共通の土台を。AI開発・運用基盤〈源内〉を、誰でも触れる実験場〈ひふみAI〉として公開します

〈源内〉って結局なに? いつ使うと便利で、どういう仕組みなの? ── AIアプリを「源内の作法」で作れば、認証・画面・履歴・予算管理といった土台がそろっていて、楽に作れて運用できる。そんな自治体向けAI開発・運用基盤〈源内〉を、誰でもまず触って体感できる実験場〈ひふみAI〉として公開しました。lg.jpドメインのメールアドレスをお持ちの自治体職員の方は無料でお試しいただけます。123ai.nice2h.com

読む →
標準化の「次」へ ― これからの自治体アドバイザー事業の方向性と新メニュー
コラム

標準化の「次」へ ― これからの自治体アドバイザー事業の方向性と新メニュー

標準化・ガバメントクラウドの「次」に、価値の中心は「運用・活用・守り」へ移ります。nice2haveは、セキュリティの転換(ゼロトラスト)/AIの庁内活用(源内・Bedrock)/AIガバナンス・体制づくりの3つの軸を、座学で終わらせないハンズオン型で展開。今後提供予定の新メニューと事業の方向性をご紹介します。

読む →
自治体向けAWSコスト最適化ダッシュボード「OptSight」を公開しました
サービス紹介

自治体向けAWSコスト最適化ダッシュボード「OptSight」を公開しました

「AWSコストを『可視化』から『最適化』へ。」自治体の情報システム部門・経営/予算管理部門向けに、AWS運用経費の可視化・EC2稼働監視・長期割引シミュレーション・AI削減提案・月次レポート自動生成を一画面でまとめるSaaSダッシュボードを optsight.jp にて公開しました。

読む →

← 記事・コラム一覧に戻る