
はじめに ― 「伴走」から、「完走」へ
FDE(Forward Deployed Engineer)は、顧客の現場に入り込み、動くものが実際に使われるところまで自分で持っていくエンジニアの呼び名です。自治体版のAI FDEでは、これを情報部門に入る前提で定義し直しました。
置いているゴールは、対話型も含めてAIを安全に、統制の取れた状態で効果的に使えるようになっていることです。研修で体感し、変える業務を見つけ、置き場所を決め、アプリを作り、ルールを利かせ、公開して使われるところまで。この道のりを最後まで走り切るところに焦点を当てているので、「伴走」ではなく「完走」という言葉を使っています。

ゴールは、AIを安全に、統制の取れた状態で
効果的に使えている状態。
なぜいま ― AI活用は「検討」から「制度」へ
資料の前半では、国の動きを確認しています。令和8年7月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」には、全府省庁で実証するガバメントAI「源内」、政府調達でのAI駆動開発の試験導入、給付・手当などの制度から着手するRules as Code、行政システムのMCP対応が並びました。国の環境と調達方式が先行し、そこで確立した進め方が自治体へ広がる構図です。
ここで押さえているのは、「AIを試す」段階の議論と、「AIを前提に調達・制度対応を組み替える」議論を分けて考える必要があることです。自治体が考えるべきこととして、国の環境を待つか自前で整えるか、調達仕様をどう変えるか、どの業務から機械可読化するか、の3点を挙げています。

AI活用までの6つのステップ
AI FDEで扱う項目は、6つのステップに整理しています。前半の4つが「整える」、後半の2つが「使う」です。
- AIとは何か、ツールの分類
分類ごとに、向く業務も必要な統制の重さも変わる
- 扱う情報の区分と置き場所
どの情報を、庁内のどのネットワークで扱うか
- 統制ポリシーと利かせる仕組み
利用ポリシーの条文と、入口・利用ログ・内製アプリの台帳
- 利用ロードマップと予算
小さく試して効果を測り、次の段階へ上がる道筋
- 変える業務を見つける手法
業務の側から探す道と、AIを体験してから探す道
- 業務×AIの分類で優先順位を決める
何から取り組むかを、効果と難易度から並べる


整える ― AIを使う前に決めておく4つのこと
1つ目は、AIを分類して捉えることです。職員が質問してAIが答える対話型、目的を渡すとAIがツールを操作して段取りごと進めるエージェント型、職員がAIと一緒に業務アプリを作るAI駆動開発。分類ごとに向く人・向く業務・まだ難しいことを並べ、自団体ではどれをどこまで使うのか、というポジショニングを整理していきます。

2つ目は、扱う情報の区分と置き場所をどうするかです。個人情報や要機密情報をAIで扱うこと自体は禁止されていません。デジタル庁の生成AIガイドライン(DS-920 第2.0版)も一律の高リスク判定をやめ、適用業務・利用範囲・出力の扱いの3軸で判定する形に変わりました。個人情報を入力してよい条件、要機密情報を扱う環境、判断の責任者を団体として決めたうえで、庁内のどのネットワークセグメントで扱うのかまで併せて整理していきます。

3つ目は統制です。庁内にルールが無いままだと、職員が個人で契約したAIを業務に使う、経路の見えないシャドーAIが増えていきます。そこで、利用ポリシーの制定は利用の促進と並行して進めるのが基本です。用意する入口には、2つの意味があります。どのAIを使えばよいか職員が迷わずに済むポータルとしての入口と、誰が何に使ったかの利用ログが残る統制のための入口です。内製アプリの台帳も同じ考え方で、誰が作った何がどこで動いているかの一覧が、庁内へ広げるためのカタログにも、点検の土台にもなるという整理です。ポリシー本文は総務省ガイドブック第4版のひな形を土台にし、団体が決めるのは15項目になります。策定の5段階については、AI利用ポリシーの決め方で別途ご紹介しています。

4つ目はロードマップと予算です。情報部門で小さく試し、件数と時間で測った効果を持って原課へ広げ、その実測を根拠に予算を要求し、全庁へ展開する。この段取りをいま描いておかないと、検討が立ち上がらないまま次の年度に入ってしまいます。「来年度は何もしない」という状態を避けるために、順番と時期を先に決めておくところです。


使う ― 変える業務を見つける
業務の中から、改善できるもの・AIで変えられるものをどう探し出すか。ここがこの支援の山場のひとつです。探し方には2つの道があります。ひとつは、住民と職員の動線を書き出して手順を一つずつ問い直していく正攻法。もうひとつは、先に研修でAIを体験し、自分の業務に戻ってから「この手順は渡せる」と気づく道です。AI FDEでは両方をお手伝いしますが、入口は後者に置いています。AIがどこまでできて何が制約かを体感していないままだと、業務を眺めても候補が出てこないためです。

見つけた業務は、AIのどの分類で、どこに置いて実現するのかまで並べて整理します。すべてに同時に着手することはできないので、効果と難易度から優先順位を付けていきます。ひとつの業務でも、受付はインターネット系、台帳はLGWAN系のように置く場所が分かれることがあるため、業務単位ではなく作るもの単位で見ていくところがポイントです。

作れた、その先 ― AI駆動開発の先に待っている課題
北海道芽室町では、専門のプログラミング知識を持たない窓口職員が、AIに指示を出しながら窓口業務支援システム「MADO」を内製し、いま現場で本稼働しています。

あわせて町は、作れたその先にある課題も公開しました。コードの中身を点検できる人が庁内にいないこと、最短ルートで積み上げた設計がどこまで耐えるか分からないこと、保守し続ける人とお金がまだ決まっていないこと。3つは「これを作った職員が異動したら、いま動いているこの仕組みはどうなるのか」という一本の軸でつながっています。属人化を解消するために作ったものが、新しい属人化を生む。AI駆動開発で内製に踏み出した団体が、その先で向き合うことになる論点です。

AI FDEでは、この3つに技術面の実装支援と分担の設計の両輪で応えます。技術面では、どこに置くかとVPC・DB・認証の型、対話型かエージェントかAI駆動開発か、情報区分と利用ログと公開前の点検、業務ごとのプロンプトとCLAUDE.mdなどの作法。分担では、対話型・Dify・AI駆動開発のそれぞれを「自分たちで作る」「ツールとして使う」「事業者に頼む」のどこに置くかを、研修での到達度と扱う情報の区分で線引きし、年度ごとに見直します。アプリを作ることと、それを支える仕組みを作ることを同時に進めるための構成です。

1年の進め方と、お手伝いできること
1年の流れは、たとえば次のような組み立てです。あくまで4月開始のサンプルなので、実際には貴団体の状況と、いまAI活用がどの段階にあるかを伺ったうえで並べ替えます。
年度単位の年間契約で、情報部門のご担当者と組んで進める形です。関わり方は月1回の定例会とチャットでの随時相談を基本に、開発の山場には集中開発の時間を設けます。何をして、何をしないか、団体側に何をお願いするかは、資料の中で一枚にまとめました。

総務省「地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業」のアドバイザー制度を使えば、相談・研修・「整える」段階の助言までは自治体側の費用負担なしで始められます。ただし制度で得られるのは助言までで、手を動かすのは職員の皆さまです。その先の環境構築・開発・統制の実務まで引き受ける年間契約が、AI FDEという位置づけになります。CIO補佐官・アドバイザー契約との組み合わせも可能です。
スライドのダウンロード
この記事で取り上げたスライドを含む紹介資料の全編を、PDFで公開しました。庁内での共有や検討の材料としてお使いください。
PDF27枚 FREE DOWNLOAD AI FDE 紹介資料(スライド27枚) この記事で取り上げた図版を含む全編。国の動向、情報の区分と置き場所、統制の仕組み、変える業務の探し方、AI FDEの仕様まで。約5.3MB/登録不要。 ダウンロード ↓AI活用を、運用開始まで一緒に完走しませんか
総務省 地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業のアドバイザー制度を通じたご相談は、自治体側の自己負担なしでご利用いただけます。
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