はじめに
自治体におけるDXの重要性は、年々高まっています。住民サービスのデジタル化、AI活用、標準化後の次の一手。情報システムはいまや行政経営の中核です。そして重要性が高まったからこそ、投資のあり方も変わってきました。「デジタル」という大きなものにまとめて投資する段階は終わり、デジタルの中のどこに重点的に投資するかが問われる段階に入っています。
一方で、運用経費は標準化・クラウド移行後に増加傾向にあり、DXのための導入システムも増え続けています。期待とコストの両方が右肩上がりのいま、無駄な投資をせず、投資の全体像とその妥当性を根拠つきで説明できる状態——つまりガバナンスを利かせる仕組みが必要です。
ところが現場では、その前提となる整理ができていません。
仕様書・契約書・見積書が、課ごとにバラバラに保管されている
調達の経緯を知っているのは、当時の担当者だけ
台帳は作った年だけ最新で、更新が続かない
私が日々お付き合いしている自治体でも、この「台帳が続かない」問題は繰り返し話題になります。今回は、その答えとして作った自治体IT調達・DX推進ガバナンスプラットフォーム「GovLens」について書きます。
ガバナンスの流れは、台帳化から始まる
私の考えるガバナンスの流れはシンプルです。まず情報資産を台帳化する。台帳をもとに投資の全体像を可視化する。可視化された事実をもとに個々の投資の妥当性を判断し、最適化する。そしてこのサイクルを、情報政策課の手の内だけでなく、各部署で行われるデジタル施策にまで利かせていく。
では、その起点となる台帳化はどこから手をつければよいのか。鍵になる事実が1つあります。システムに関する意思決定は、すべて調達を通じて行われ、必ず文書として残っているということです。調達文書を起点にすれば、棚卸しも可視化も、根拠つきで積み上げられます。
台帳が続かないのは、意欲の問題ではない
とはいえ、情報資産台帳の整備が続かないという現実があります。これは職員の方々の意欲の問題ではありません。文書を人手で読み解いて転記するという作業が、構造的に続かないからです。作った年だけは最新でも、翌年度には更新が止まり、3年目には誰も見なくなる。この形骸化のサイクルを、私は何度も見てきました。
GovLensの出発点は、この「読み解き・転記」をAIに任せることで、棚卸しを単発のイベントから続く仕組みに変えられる、という発想です。文書をアップロードすると、AIが仕分け・抽出・突合を行い、人が確認して採用し、業務で活用する。このサイクルが回り続けます。
諦めていたことを、諦めなくてよくなった。
これがGovLensの核です。
台帳は、育てられる・探せる・訊ける
台帳の中身は、3階層で設計しました。まず名称・所管・種別・契約・費用といった、全システムで埋める最小セットの基本項目。充足率で台帳の埋まり具合がひと目で分かります。次に、保守条件・構成・冗長化など、重要システムから段階的に深掘りする詳細項目。さらに、庁内ルールに合わせて自団体独自の観点を追加できるカスタム項目。運用に合わせて台帳が育っていく構造です。
AIの抽出候補は、確度と出典ページつきで提示されます。候補が競合したら人が正しい値を選ぶ。選ぶほど精度が育ちます。「AIが全部やってくれる」とは言いません。ただ、いちばん重い読み解きと転記が消えるだけで、台帳整備の景色は大きく変わります。
そして整理された台帳は、日々の道具として使えます。
台帳を「作って終わり」にせず、日々の調べ物や問い合わせ対応の入り口にする。だから使われ続ける——ここはこだわった部分です。
そして台帳が埋まると、その先が変わります。ダッシュボードには年間IT投資(前年比)・契約満了・DX達成率・遵守率といった経営指標が1画面に集約され、集計しなくても現在地が分かります。全体スケジュールは台帳の契約期間から自動展開され、契約・更改・RFI/RFP・公示といった調達イベントが時系列で見えている状態に。逆算しなくても、次に来るものが見えているわけです。
調達と申請管理 ― やり取りが、そのまま証跡になる
ガバナンスを利かせる上で、私が特に重視しているのが調達と申請管理の場面です。
これまでの調達では、情報収集の段階で全体像が見えず、仕様作成は担当者の経験頼み、審査は毎回ゼロから文書を読み込み、終わったら手作業で台帳に転記する——という流れが一般的でした。この構造では審査がどうしても「関門」になり、所管課にとっても情報政策課にとっても負担の大きい儀式になりがちです。
GovLensでは、情報資産や庁内文書の申請を一つの受信箱に集約し、状態や未読を一覧しながら、インラインPDFでその場で審査できます。ポイントは、項目単位で議論できることです。既存システムやスナップショットと比較しながら、個々の項目について所管課とやり取りできるので、「この保守費は妥当か」「既存システムと重複していないか」を事実ベースで確認できます。
やり取りと判断はスレッドに記録され、承認と同時に台帳へ登録され、証跡として引き継がれます。所管課から見れば、申請するだけで台帳整備が完了する。情報政策課から見れば、部門外の調達も取りこぼしなく統制でき、「なぜこの決定になったか」をいつでも説明できる。審査を「関門」から「支援」へ変え、部門外の調達にも自然にガバナンスが利く状態を作る——これが申請管理の狙いです。議会や監査への説明に強くなることは、結果的に職員の方々自身を守ることにもつながると考えています。
国の基準との突合も、独自施策も、同じ土台で
国のDX推進計画(全45項目)やセキュリティポリシーガイドラインとの突合もAIが行います。「基準×自団体の文書」を項目・条項単位で突合し、達成率・準拠率・差異一覧を一画面に。国の改定は運営側が反映するため、自治体側は再評価するだけで追従でき、負担がありません。
しかも判定で終わらせません。項目ごとに実施手順・担当・期限を起票して推進管理でき、国の枠組みに加えて自団体で策定した独自施策・計画も同じ画面で管理できます。国の指針への「対応」から、自団体の計画の「推進」へ。計画管理を、報告のための作業ではなく実務の道具にすることを目指しました。
なお、公共セクターでお使いいただく前提として、データ取扱いは国内処理・AI学習不使用・組織内閉域の3原則を提供時点から徹底しています。
おわりに ― まずはデモから
まずは公開デモを触ってみてください。会員登録不要・ブラウザですぐに、情報資産台帳のAI抽出イメージからDX推進計画・セキュリティ差異分析まで、実物のUIで一通り体験できます。その先には、実際の文書サンプルで抽出精度や運用適合性を検証する実証実験も用意しており、結果を踏まえて体制やスケジュールを個別にご提案します。
デジタルの中のどこに重点投資するかを、根拠を持って判断できる状態を作る。その第一歩は、台帳化から始まります。台帳整備に一度は挫折した経験のある自治体の方々にこそ、触ってみていただきたいプロダクトです。ご質問やご相談があれば、どうぞ遠慮なくお声がけください。
「台帳が続かない」、GovLensで終わらせませんか
公開デモは会員登録不要・ブラウザですぐ。台帳のAI抽出からDX推進計画・セキュリティ差異分析まで、実物のUIで体験できます。
実際の文書サンプルで検証する実証実験パートナーも受付中です。
貴団体の課題に合わせた使い方のご相談から。所要1時間程度のオンライン打ち合わせも承ります。




