【研修レポート】自治体の運用経費最適化講習会 ― ガバメントクラウド移行後に自治体が取り組むべきこと
はじめに:なぜ今「運用経費最適化」なのか
自治体職員を対象とした「運用経費最適化に関する講習会」を実施しました。本記事では、講習会の内容を振り返りながら、ガバメントクラウド移行後に自治体が直面する課題と、運用経費を最適化するための具体的なアプローチについてご紹介します。
2025年度末の移行期限を迎え、自治体システム標準化とガバメントクラウドへの移行は大きな節目を迎えています。しかし、朝日新聞(2026年1月22日付)でも報じられたように、移行によってコストが下がるどころか、むしろ増加している自治体が少なくありません。
中核市市長会の調査では、運用経費が平均2.3倍に増加しているというデータもあります。当初のデジタル庁の説明では「運営経費を3割削減」とされていましたが、現場ではオーバースペック・逆に運用経費増という声が相次いでいます。
このような状況を踏まえ、本講習会では「正しい理解のもとにしか適切な対策ができない」をモットーに、解説を行いました。
第1部:標準化に伴うガバメントクラウド移行の課題整理
ガバメントクラウドの目的に立ち返る
まず確認したのは、標準化・ガバメントクラウドの本来の目的です。政府共通のクラウドサービスの利用環境(IaaS/PaaS/SaaS)を活用することで、人的負担軽減、財政負担軽減、データ移行やデータ連携の容易化、セキュリティや運用監視の集中化が期待されていました。
しかし現実は、理想とかけ離れた状況にあります。セキュリティ・運用の一部共通化にとどまり、コストは自治体ごとの個別最適化が求められ、基幹系については複数年に渡る計画が必要な「都度調達」の状態が続いています。
自治体が直面しているリアルな課題
講習会では、現場の自治体職員が抱えるリアルな悩みを共有しました。見積もりが今までの何倍にもなっている、財政に理由を説明できない、そもそも何が変わるのかすらわからない、データ連携の調整がつかない――これらは、500以上の自治体を支援してきた中で繰り返し耳にしてきた声です。
クラウドに対する「良い幻想」を解く
「安くなる」「障害に強い」「セキュリティが高い」「人材不足に対応できる」——これらは必ずしも無条件に実現するものではありません。本当にそうなのか、自分たちに必要なものか、条件付きではないか、段階的でなくてよいのか。こうした問いかけを通じて、本質を共有しました。
第2部:コスト及び運用の最適化と補助金受給の計画立案
情報システムの現在地を正しく認識する
第2部では、まず現在の情報システムが「過去」「現実」「理想」のどこに位置するかを確認しました。
理想はセキュリティ・運用監視の共通化と全自治体で共通SaaS化ですが、現実はその途中段階であり、OS以上の部分は個別に対策が必要な状態です。この現在地を正確に把握したうえで、今後の最適化に取り組む必要があります。
運用経費に対する国庫補助金の活用
令和7年度補正予算で措置された「地方公共団体情報システム運用最適化支援事業費補助金」について詳しく解説しました。
補助対象経費700億円(国費350億円、補助率1/2)の制度ですが、R5年度比で3割増になっていないと補助対象にならない点や、最適化(削減)計画の事前策定・提出が必要な点など、重要な要件を確認しました。補助は時限的なものになる可能性が高く、今のうちに計画を策定しておくことが不可欠です。
コスト最適化ロードマップ
講習会の核心となったのが、実際にコスト最適化をどう進めるかのロードマップです。
6つのステップに分けて、段階的に取り組む方法を提示しました。
- コスト削減目標の設定 — 構造的改革の要否を判断するための目標設定
- 運用費用のコスト構造明確化 — ASP単位で標準化前後を比較し、内訳を把握
- クラウド費用最適化 — 予算管理・構成最適化・長期割引・為替対応
- 運用費用最適化 — 運用仕様書の明確化とベンダー交渉
- パッケージ費用最適化 — ベンダー変更検討とTCO判断
- ガバクラ以外の選択肢 — 代替プラットフォームと非機能要件の検討
コスト最適化の具体的手法
具体的な費用削減の手法として、長期割引の適用(RI/SP)、為替レートの変動制・固定制の選択、クラウド費用最適化、モダン化・SaaS化、FinOps導入、ダッシュボード利用、ベンダー統一、見積もり精査、ロックイン回避連携など、多岐にわたるアプローチを紹介しました。
重要なのは、クラウド費用の最適化だけでなく、目標次第で手法を選択するという考え方です。アプリ利用料、クラウド利用料、運用管理費用の3層構造を意識し、それぞれに対して適切な対策を講じることが求められます。
今後に向けて
ガバメントクラウド移行は、デジタルと業務が絡み合い、ステークホルダーの多い非常に複雑な事業です。これを乗り越えるにはプロジェクトマネジメントとデジタル知見の醸成の両輪が不可欠です。
現場がなんとか回っているのは人材が消耗しているからであり、本来の職員減への対策であるはずなのに、取り返しがつかない状況になりつつあります。だからこそ、正しい理解のもとに適切な対策を打つことが今、最も重要です。
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